
TB1eのシフトワイヤーを交換、調整する。目安としては1年~2年、または3,000km~5,000km走行で交換。ウーバー配達員なら遅くとも半年くらいで交換した方が良さそうだ。特に非電動アシストならなおのこと。この記事ではアウターケーブルは交換せずそのまま継続使用し、中のインナーケーブルだけを交換。
ディレイラーの調整に関して書籍、サイト、動画など色々参照したが、不思議なものでそれぞれやり方も用語もすこしずつ違っていた。この記事ではいったん自分なりにまとめてみたが、今後またやり方を替えたら随時、この記事も更新していきます。
用語

シフトワイヤーは二重構造になっていて、アウターケーブルの中をインナーケーブルが通る。
『インナーケーブル』…写真左。金属の細い部分。変速するときに引っ張る、言わばシフトワイヤー本体。
『アウターケーブル』…写真右。黒い筒状の部分。インナーケーブルのカバーのような物。
今回は中のインナーケーブルのみを交換する。いずれアウターケーブルも劣化してくれば交換する必要が出てくる。

『シフター』…TB1eの右ハンドルに設置されている変速装置。

『タイコ』…シフター側に来る、インナーケーブルの末端。

①スプロケット…後輪の軸に装着されていて、チェーンの掛かっている歯車。ノーマルのTB1eには大きさの違う7枚が付いている。
②ガイドプーリー…スプロケットに近い方の小さな歯車
③テンションプーリー…スプロケットから遠い方の小さな歯車

『ディレイラー』…チェーンをスプロケットそれぞれ行き来させるリヤの変速装置。

①『トップ側調整ボルト』…ガイドプーリーのトップギヤ側の位置を調節するボルト。『H』と刻印されている。
②『ロー側調整ボルト』…ガイドプーリーのローギヤ側の位置を調節するボルト。『L』と刻印されている。

③『Bテンションアジャストボルト』…ガイドプーリーとスプロケットの距離を調整するボルト。
④『テンションアジャスター』…インナーケーブルの張りの強さを調整するつまみ。手で回すことができる。
シフトワイヤーが完全に切れた時の話
以前ウーバーイーツの稼働中、シフトワイヤーが完全に切れてしまったことがある。その時の写真がこちら。

この時はシフターを強引にこじ開けて、シフターの中に残ったタイコ側をなんとか取り除くことに成功。一応用意しておいた交換用の同型シフターは使わずに済みました。
前兆…完全に切れたとき
振り返ってみれば前兆はあった。
まずシフトレバーが引っかかる感じで重くなった。
そのうちに段々とシフトレバーがバネで自動で戻らなくなって、手動で引っ張って無理やり戻すようになった。
更にそのまま使っていると、なんだか引っ掛かりが直ったように軽くなった。
そしてある時、シフトワイヤーが完全に切れて反応しなくなった。
何事かと思いシフターからアウターワイヤーごと引っ張ってみたら、先程の写真の状態で天を仰いだ。

束ねられたシフトワイヤーを解いてみたら19本あった。どうやらこれらが徐々に千切れていき、最終的には完全に断線してしまったようです。
前兆…切れ始めたとき
そして今回。ギヤを重くする方の、人差し指のシフトレバーが引っ掛かるようになってきた。
この感覚、もしかしたらあの時のようにまたシフトワイヤーが千切れ始めているのかもと思い、交換してみることにした。
結果的にシフトワイヤーは、19本束ねられているうちの2本が切れていた。この2本がシフター内部で引っ掛かっていた様子。なるほどあれが前兆だったのかと合点がいった。
パーツと工具
シフトインナーケーブル
シマノ シフトインナーケーブル ステンレス 2100mm Y60098911
交換用のシフトワイヤーのインナーケーブル。インナーエンドキャップが1個付属している。

インナーケーブル用グリス
シマノ ケーブルグリス 50g Y04180000
潤滑と錆止めとしてインナーワイヤーに塗布。
※固定ボルト、インナーエンドキャップ付近には決して付かないように注意する。
プラスドライバー #2
Wera プラスドライバー2×100 008720
シフターのインナーケーブル差込口のカバー、各種ディレイラーの調整ボルトに使用。先端のすべり止め加工でしっかり噛んでくれるのでネジに力が伝えやすく、ネジ山をなめにくい。
スパナ 9mm
ディレイラーのインナーケーブル固定ボルトに使用。weraの工具はサイズごとに色分けされていて作業しやすい。
ケーブルカッター
パークツール プロフェッショナルケーブルカッター CN-10
最初、楽器のベースの弦交換用の太いニッパーでシフトワイヤーを切ってみた。大の大人が渾身の力を込めてぷるぷる震えながらなんとか切断することはできたが、明らかに危険だった。手元も危険だが、場合によってはニッパーが欠けてその破片が目にでも入ったら重大な怪我に繋がりかねないので、ニッパーでの切断は絶対にやめた方がいい。
専用のケーブルカッターだと驚くほどサクッと簡単に切断できる。
インナーエンドキャップ
KCNC スレッドロックインナーキャップ シフトケーブル用
普通の”かしめる”タイプのインナーエンドキャップはシフトインナーケーブルに1個付属しているが、私はこちらの”かしめない”タイプを使用している。インナーケーブルをかしめず、全体を挟みこんで固定するタイプなので、インナーケーブルを交換する際、アウターケーブル内部を傷付けにくい。なおかつ使い捨てではなく、繰り返し使えるリユースタイプ。非常に気に入っている。
インナーケーブルの交換
取り外し シフター側
まずインナーケーブルの状態を見てみたいので、シフター側から作業する。

1番重いギヤにする。

シフターのインナーワイヤーの差込口はプラのボルトでフタをされている。

プラスドライバー #2で外していく。非常に短いボルトなので、3/4回転ほどで外れる。ボルトもシフター本体もプラなので、回し過ぎて傷付けないように注意。

外した。インナーケーブルの末端、『タイコ』が見える。シフターの位置は最初に変速しておいた通り、一番重い7速。
インナーワイヤーの状態を見てみたいので、試しに変速していってみる。

6速。

5速。

4速。

3速。なんとなくワイヤーの束が乱れてるような気もする。

2速。

1速。一番軽いギヤ。
最後にまた7速の位置に戻しておく。
※インナーケーブルが完全に切れている場合

インナーケーブルが断線してしまった場合は、シフター内部からタイコ側を取り除かなければならない。

1番軽いギヤにしておく。

六角レンチ5mmで取り付け器具を緩めて、シフターを上側に回すと作業がしやすい。

プラスドライバー #2で一箇所ネジを外す。

特殊ネジの所は外してないが、これで少しだけ開いてタイコ側を取り除くことができた。
写真では撮影のためにラジオペンチで大きめに開けているが、ちゃんと分解していないのであまり無理に開かない方がいい。
また、無事タイコ側を取り除けたとしても、シフター内部が無事とは限らない。千切れたインナーワイヤーで致命的な損傷を負い、動作に支障が出るようなら、諦めてシフターを新品と交換せざるを得ない。

シフター裏側の刻印。

一応用意しておいた交換用の同型シフター。今回は無事、交換せずに済んだ。
取り外し ディレイラー側

見やすいように横倒しにして作業。

インナーワイヤーが固定ボルトで留まっている。

スパナ 9mmで固定ボルトを緩めて、インナーワイヤーを外していく。ボルトを完全に外す必要は無い。

外れた。

インナーケーブル末端のインナーエンドキャップを取り外す。

外した。

テンションアジャスターからアウターワイヤごと外していく。

アウターワイヤーにインナーワイヤーを押し込んでいく。

シフター側からインナーワイヤーが出てくる。

取り外したインナーワイヤー。全体で約193cmだった。

束ねられた19本のうち、2本が切れていた。
取り付け シフター側
シフターからインナーワイヤーを差し込み、アウターワイヤーに通していく。

まずは曲がっているアウターワイヤーの出口周辺を、なるべく真っ直ぐに伸ばしておく。そうしないとインナーワイヤーがアウターワイヤーの出口に引っ掛かってなかなか出て来れない。

上:新品のインナーワイヤー
下:取り外したワイヤー
取り外したインナーワイヤーと新品のインナーワイヤーをタイコ側から揃えて持つ。取り外したインナーワイヤーを頼りに、新品のインナーワイヤーのタイコから固定ボルトの約5cm手前まで手でケーブルグリスを薄く塗布する。
タイコから測ったら約180cmだった。
※ケーブルグリスは、固定ボルトやインナーエンドキャップの付近には決して付かないように注意する。

シフターは1番重いギヤにしておく。ノーマルのTB1eなら7速。

インナーワイヤーを差し込んでいく。

アウターワイヤーからインナーワイヤーが出てくる。
出口に引っ掛かるようならまたアウターワイヤーを伸ばしたり、インナーワイヤーを回したりしてみる。

インナーワイヤーが最後まで入った。

プラのフタをする。

プラスドライバー #2で締めるが、3/4回しほどで締まる。力を入れすぎると簡単になめてしまうので要注意。

締めた。
取り付け ディレイラー側

調整用のテンションアジャスターは、締め込んでから2回転緩めておく。

テンションアジャスターにインナーケーブルを差し込んでいく。

インナーケーブルを引っ張っていき、アウターケーブルをテンションアジャスターにハメる。

固定ボルトでインナーケーブルを固定していく。

スパナ 9mmを使用。ディレイラーは複雑にグラグラ動くので、もう片方の手で頑張って支える。

締めた。

ケーブルカッターで、固定ボルトから約8cmの所でカット。

余分なインナーワイヤーをカットした。

切断面はそのままにしておくと尖って危ないし、段々と解けていってしまうので、インナーエンドキャップを取り付ける。私は挟み込むタイプのKCNC スレッドロックインナーキャップ シフトケーブル用を好んで使用している。

通常のかしめるタイプのインナーエンドキャップならインナーワイヤーに1個付属している。
ディレイラーの調整
シフトワイヤーを交換したら、ディレイラーの調整が必要になってくる。調整箇所は4ヶ所。
トップ側調整ボルト
ガイドプーリーのトップギヤ側の位置を調節する。

『H』と刻印された、右側が『トップ側調整ボルト』。

トップギヤ(1番重いギヤ)の右端とガイドプーリーの歯先が一直線上になるように調整する。

プラスドライバー #2を使用。
- 時計回り(締める)…ホイール側に移動
- 反時計回り(緩める)…外側に移動
テンションアジャスター
インナーケーブルの張りの強さを調整する。

真ん中の4速に入れる。ペダルを回してチェーンがスムーズに回るように調節。つまみを回して、調整範囲の真ん中あたりになる位置を探る。

テンションアジャスターを手で回して調整。
- 時計回り(締める)…張りを弱める
- 反時計回り(緩める)…張りを強める
ロー側調整ボルト
ガイドプーリーのローギヤ側の位置を調節する。

『L』と刻印された、右側が『ロー側調整ボルト』。

ローギヤ(1番軽いギヤ)の中心とガイドプーリーの歯先が一直線上になるように調整する。

プラスドライバー#2を使用。
- 時計回り(締める)…外側に移動
- 反時計回り(緩める)…ホイール側に移動
Bテンションアジャストボルト
ガイドプーリーとスプロケットの距離を調整する。

チェーンが詰まって異音が出ない範囲で、なるべくガイドプーリースプロケットに近付ける。
近付きすぎると、チェーンが詰まって異音がする。また、ペダルを後ろに回してもチェーンが詰まって空回りできなくなる。
離れすぎると、変速がうまくいかなくなってくる。

プラスドライバー#2を使用。
- 時計回り(締める)…ガイドプーリーが離れていく
- 反時計回り(緩める)…ガイドプーリーが近付いていく